姉の過去
※注意※
おねショタ描写無し
ヒロインの過去編です
【内訳】
表紙:1p
キャラ紹介:1p
扉絵:3p
本編:70p
【ストーリー】
「平凡」を絵に描いた様に、可も無く不可も無く、平坦で刺激は無く、大きな挫折も無く、成功も無い。そんな人生を1◯年送って来た。
その中で唯一と言っていい大きな出来事。
母の浮気、そして父との離婚。
昔から母の興味が私に向かう事は少なかった様に思う。
ならば虐待や育児放棄をされていたのかと、それも違う。
食事も作っていたし、父兄参加の学校行事にも顔を出していた。
だがその中で、母が私に笑顔を向けた記憶が無い。逆に怒られた記憶も無い。
テストでいい点を取っても、家の物を落として割ってしまっても、母は大きな反応をする事は無かった。
私が高校に入学した後に、両親は離婚した。
原因は母の浮気だが、これに関して一つ、私は父に隠している事があった。
母が浮気している事を、私は知っていた。
ある日偶然、見てしまったのだ。母が、見知らぬ男性と腕を組んで歩いている姿を。
少なからずショックを受ける自分に驚いたが、それは母が浮気していたからでは無い。
その男性に向ける、母の初めて見る「笑顔」。
その瞬間何となく理解してしまった。
母にとって子育ては義務だったのだと。
産まれた子供は育てなくてはいけない。
ただ別に産みたかった訳ではない。
快楽の失敗か、周囲からの圧力か、もしくは父の願いだったのか。
果たして私は、望まれて生を授かったのか?
ただこれだけは理解出来た。
母は私に興味が無かったのでは無く、疎ましかったのだ。
父では無い男性に向けられる、「女」としての母の表情がは、あまりにも雄弁だった
離婚して間も無く、父は仕事を休みがちになり、遂には休職してしまった。
嗜む程度だったお酒の量も増え、毎日部屋でうなだれている。
無口だが真面目で優しかった父をここまで堕落させる程、父は母を愛していたのか。
愛…好き…概念では知っているが、実感として理解出来ない言葉。
平凡を絵に描いた様に、可も無く不可も無く、平坦で刺激は無く、大きな挫折も無く、成功も無く、好きも嫌いも無ければ、愛とも縁遠く…その内に年老いて独り土に還るのだろう。
それが、三澤明音の人生なのだろう。
だから、私に関わらないで欲しい…他人との会話は息が詰まる。クラスメイトというだけで、関わった事すらないのに。
彼女達は言葉を続けた。
「三澤さんさぁ、合コンとか興味ない?」